ありんこです。(プロフィールこちら)
全国の「熊野神社」の総本宮、熊野三山。そのなかでもとくに有名で、日本の重要文化財にも指定されている熊野本宮大社。
今回の記事では、熊野本宮大社に関係するちょっと不思議な話を紹介します。
「熊野本宮大社」知らないと恥をかく・・・お参りの仕方と順番
本殿へとつづく石段は、158段。杉の木が生い茂っている中で、石段の両側にはたくさんの旗がなびいています。
そして神門をくぐると、立派な社殿が姿をあらわします。社殿は写真撮影禁止なんですが・・・ここ熊野本宮大社の社殿はなんと、お参りの仕方が独特。
ちゃんと、お参りの仕方が書かれていました。
向かって左の社殿が夫須美大神(ふすみのおおかみ)、速玉大神(はやたまのおおかみ)。真ん中が主神である、家津美御子大神(けつみみこのおおかみ)。そして右から2番目に天照大神(あまてらすおおみかみ)がまつられているとのこと。
5つ社殿があるんですが、左から順番に5回お参りする・・・んじゃなく、右、逆から順番にお参りする・・・んでもなく、真ん中→左から2番目→左→右から2番目→右というなんとも複雑な順番でお参りすることが決められているのです!
これは、身分の順と関係があるんですが。守らなければ、ここでのご利益と言われている交通安全、大漁満足、家庭円満、夫婦和合、長寿などの願いは叶えられないよう。
お参りの仕方と順番が書かれたこの看板、気づかず素通りしてしまいそうな場所にあるんですが、しっかりと確認してからお参りをしたいもんです。
熊野本宮大社の八咫烏(やたがらす)
ここ熊野本宮大社のいたるところに見られる、なぜか3本足のカラス。
このカラスは八咫烏(やたがらす)と呼ばれている特別なカラスで、日本サッカー協会のシンボルにもなっているのです。
熊野では、この八咫烏が「神の使者」であると言われています。
カラスは一般的には不吉な鳥だと言われているんですが、じつは方角を知っているので未知の地へ行くときの道案内や、遠隔地へ送る使者の役目をしてくれる鳥だとも言われているのです。
熊野本宮大社ではこの八咫烏を
- 人の道開きの開運、人生、目的達成
- 現在地から目的地の間、無事に到達すること、海上安全や交通安全、旅行安全、通学安全
の守護として仰いでいます。
ちなみに3本足なのは、熊野三党を表していると言われています。
熊野本宮大社と三つの月!?
熊野の中辺路町や本宮町では、旧暦11月23日に現れる月がなぜか3つに見えるという言い伝えがあるのです。
旧暦23日の月は「二十三夜月(にじゅうさんやづき)」と呼ばれていて、深夜の12時頃に姿を現すので「真夜中の月」とも言われているそう。なぜ、この旧暦11月23日だけに?そしてそれは本当なんだろか・・・。
中辺路町の高尾山で修行していたひとりの修験者が野中(のなか)、近露(ちかつゆ)の里に降りてきて、「11月23日の月が出たとき、高尾山の頂きで法力を得た。村の衆も11月23日に高尾山に登り、月の出を拝むがいい。三体の月が現われる」と里人に告げ、立ち去った。
里人たちは疑ったが、翌年の11月23日、幾人かの里人が高尾山に登り、修験者の言の真偽を確かめることにした。もし三体の月が出たら、山頂からのろしを上げて里に知らせることにした。
月の出を待った。月が出た。里からはいつもの通り一体の月が見えるだけである。
しかし、高尾山山頂では、一体の月が出ると、その左右からもそれぞれ一体ずつの月が出た。修験者のいう通り、三体の月が出たのである。これを見た人々は急ぎ、薪を集めて、里人へ知らせるためにのろしを上げた。これを見た里人たちは、顔を見合わせ、不思議な山と修験者のことを語り合った。
このことがあってから、毎年11月23日の夜には、高尾山に登り、月待ちを行うようになった。
という伝承。
ただの昔からの言い伝え。そんなこと実際にはなかったことだし、今の時代にそういう嘘を言う人はいない。
・・・はずなんですが、なんとこれがどうやら現実にも起きていることなのでした!
2006年1月5日(旧暦12月6日)の夜、この辺りに住んでいる人がその3体の月を目撃したというのです。それが、こちらの写真!
夜の10時ちょっと前に撮影された写真なよう。たしかに月が3つ、ちょっとずつ重なっているように見えます。
旧暦11月23日ではなかったけど・・・実際にこれに近い時期、熊野では3体の月が見られるということなのでした。なんと、言い伝えは嘘ではなかった。
この3つに見える月ですが・・・この時期特有の急な冷え込みによって大気が乱れ、光の屈折の仕方によってこうして月が3つに見えるという説があります。また、「幻月(げんげつ)」と呼ばれる珍しい現象だという説もあり。幻月っていうのは、空気中にある氷の結晶による光の屈折で起こる現象。実際に見える月の両側に、実際にはないんですがそこに月があるかのように見えるのです。
熊野本宮大社のシンボルとなっている八咫烏の足は3本。ここで見られる月は3つ・・・こういう奇妙なことが重なっているのは、そして3という数字はただの偶然なんだろか。
理屈じゃ解明できないこと、自然界や昔の人間が作り出したもののなかにはまだまだたくさんあるんでしょう・・・。
世界遺産 熊野古道を歩く 紀伊山地の霊場と表詣道 (楽学ブックス 文学歴史 3)
興味深い話、こちらにも載っています。旅行のガイドブックなんかを見るよりも、この本を読んでから訪れる熊野のほうが100倍は面白い。誰にでも分かりやすく書かれている、おすすめの著書です。