世界遺産熊野古道の山歩きと「ダリ(ダル、ヒダル)」
ありんこです。(プロフィールこちら)
日本の世界遺産、熊野古道。
和歌山県、紀伊田辺から熊野本宮に向かう中辺路(なかへち)、田辺から海岸線沿いに那智(なち)、新宮へ向かう大辺路(おおへち)、高野山から熊野本宮へ向かう小辺路(こへち)が「熊野参詣道」として世界遺産に登録されています。
今回、紀伊方面に行ったので立ち寄ってきましたが・・・ちまたではよく知られている「ダリ」という存在について。身近でおそろしい話を聞いたので紹介します。
世界遺産熊野古道で取り憑く怪物「ダリ(ダル、ヒダル)」とは
山歩き中の空腹感に注意
山歩きをしているとき、ふと空腹感を感じる。
そのまま歩いていると間もなく、急な脱力感に襲われ、意識がもうろうとし、歩くことすらできなくなってしまう。
これは「ダリ」、「ダル」、「ヒダル」、「ヒダル神」などと呼ばれている憑き物のしわざで、ここ熊野をはじめ西日本の山ではよく聞く話なんだそう。
「ダリ」によるひどい空腹感、疲労、そして体の自由がきかなくなることで、ときには死んでしまうこともあると言います。この場所はたいてい、峠や山奥、今までに人の行き倒れなどがあった地点。
ダリ、ダル、ヒダル、ヒダル神に取り憑かれると・・・
「ダリ」の見かけはこんな感じ、死神のようなイメージだと伝えられていますが、それが本当かどうかは、分かりません・・・。
取り憑かれた人たちは、その直前に異様な気配を感じ、そして何かに取り憑かれたということは感じるが誰一人としてその姿を目撃していないのです。しかもこの「ダリ」、取り憑いたあとの後遺症などは何一つ残さないのも特徴。
世界遺産熊野古道、山歩きでの「ダリ(ダル、ヒダル)」への対策
米を一粒
そもそもこの「ダリ」、山で飢えて死んだものが悪霊になって、人に取り憑くのだといわれています。
「ダル」は空腹のときに憑きやすく、ダルに憑かれたときは米を一粒でも食べるとダルが退くと、熊野の周辺では言い伝えられています。昔の人は、山へ行って弁当を食べるときは米粒を一粒だけでも残しておくようにしていたそうです。米粒がないときには、手の平に「米」という字を書いてそれを食べる真似をする、というのでも効果があったようです・・・なんだか、何か他のおまじないと似ているけど・・・。緊張をほぐすときだっけかな。
「ダリ(ダル、ヒダル)」に取り憑かれる場所
熊野に、大雲取、小雲取という二つの大きな山があり、その山の中間あたりに餓鬼穴という場所があります。その穴を覗くと必ず、この「ダリ」に取り憑かれるそう。
「大雲取越え、小雲取越え」は那智から本宮へと向かう熊野参詣道(熊野古道)ですが。「死出の山路」とも呼ばれていて、その道を歩いていると、ダルに取り憑かれたり、亡くなったはずの肉親や知人に出会ったりするという不思議な現象に遭遇するといわれています。
けっこう長い道のりですが、時間があればぜひ・・・。
世界遺産熊野古道の「ダリ(ダル、ヒダル)」は二酸化炭素中毒だった?
この一連の言い伝え。昔からの言い伝えですが、現代になっても体験したという人がいるそうで。
でも、取り憑かれたという感じはあるものの誰もその姿を見てはいないし、意識がもうろうとするものの後遺症は全くない。「ダリ」が本当にいるのかどうか、証明できないままなのです。
ということで、現代ではこれは単なるガス中毒だったんじゃないかとも言われています。実際にこの周辺でガス濃度の計測を行ったことがあるようですが、ある地点では大気中の二酸化酸素濃度が通常の約20倍もの数値が出たとのこと。
ふつうは、落ち葉などの有機物が腐食することによって発生した二酸化炭素は、空気の流れによって周りに拡散するのでそんなに大きな数値になるはずはなく。ただきっと、ある地点では極端に空気の流れが悪く、ガスが濃くなってしまったんだろうということです。
二酸化炭素中毒になった人の症状とこの「ダリ」に取り憑かれたと言われる人の症状はほぼ一致。意識がもうろうとしている中なら、いろいろな幻覚を見てもおかしくありません。
でも、空腹の状態で山道に入ったならまだしも、突然の空腹感っていうのは何なんだろか・・・。そして、熊野の山だけじゃなく日本全国、どんな場所でも大自然の中で不思議な体験をしたという人たち、不審死をした人たちが後を絶ちません。
自然は人間が思っている以上にはるかに壮大で、力の及ばないもの。なのは分かっているつもりでも、不思議なことは多いもんです。